「国民年金は仮に滞納してしまっても、差し押さえの対象にはならないでしょう!」
と思っているそこのアナタ!
その考え方は少々改める必要があります。
国民年金についてはしっかりと正しい知識を備えた上で、然るべき対処をしておかないと、実際に差し押さえられる可能性は十分にあります。
ここでは、国民年金の支払いや滞納に関する基本的な知識をシェアするのはもちろん、差し押さえ前に活用したい制度についても理解を深めていきたいと思います。
今、まさに国民年金を支払えていない状況にある方はぜひ、以下の内容をしっかりと読み進めてみてくださいね。
国民年金は支払いが義務!滞納すると差し押さえの対象に!

まず、最も基本的なこととして、国民年金は支払いが義務であり、全ての国民は所定の年金を納める必要があります。
支払う義務があるということは、当然のことながら、滞納していると差し押さえの対象となってしまうのは言うまでもありません。
- 全ての国民は国民年金を支払う義務がある
- 滞納していると差し押さえの対象となる
なお、会社員と個人の方では、年金の名称と支払い方法が異なりますので、こちらについても簡単に解説をしておきましょう。
個人は国民年金!会社員は厚生年金を支払う
企業に勤めている会社員と個人では、以下のように年金の名称が異なります。
個人事業主などは国民年金、会社員であれば厚生年金となります。
- 個人:国民年金
- 会社員:厚生年金
会社員の方が独立して個人事業主になった場合や、逆に個人事業主の方が会社員として勤務するようになった場合には、年金の名称や支払い方法が変わると認識しておきましょう。
会社員の方については、給与から天引きされるかたちで厚生年金の支払いが行われるため、特に意識していなくても、毎月きちんと支払いが滞ることなく行われるのはメリットと言えますね。
国民年金と厚生年金の違い
「国民年金と厚生年金ってどんなふうに違うんですか?」
という質問がここで飛んできそうなので、両者の違いをまとめてみました。
基礎年金とも呼ばれるもので、20歳以上60歳未満の国民全員が必ず加入することになっている年金。国民年金の保険料は定額で、国民年金の支給額は加入期間に応じて決定される。加入期間が満期の40年間ある場合には満額がもらえるが、それより少ないと少しずつ減少する。
厚生年金保険は、国民年金に上乗せされて給付される年金。厚生年金の保険料は、毎年4月~6月に支払われる給与をベースに計算した金額(標準報酬月額)とボーナスに対して共通の保険料率を掛けて算出し、その金額を、雇用主と加入者が半分ずつ負担することで、保険料額が確定される。厚生年金の支給額は加入していた期間の長さ、および払ってきた保険料の額によって決定される。
ご覧の通り、20歳〜60歳の方は例外なく、国民年金を支払う義務があることがわかりますね。
仮に会社員から個人事業主になった場合は、市役所の年金課に赴き、国民年金への切り替え手続きを忘れずに行いましょう。
国民年金の滞納で差し押さえられる前に活用したい制度

「え、どうしよう!ちゃんと年金を支払えていない!」
という方ももしかしたらいるかもしれませんね。
でも大丈夫。
きちんと以下のよう手続きをしていれば、差し押さえにまで発展することはありません。
- 免除の申請
- 猶予制度の利用
ここでは、これらの具体的な内容について触れていきましょう。
国民年金免除の申請

国民年金は、所得が一定額以下の場合や失業した場合など、保険料を納めることが経済的に困難な状況であれば、申請書を提出し、承認されれば保険料の納付が免除となります。
免除される額は以下の4種類があります。
- 全額
- 4分の3
- 半額
- 4分の1
もちろん、免除された場合には、受給できる年金額は落ちてしまうため、その点も踏まえた上で申請をしましょう。
保険料免除の承認基準と、受給できる年金額については下表を参考にしてみてください。
免除額 | 承認基準 | 受給可能な年金額 |
---|---|---|
全額 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること ・(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 | 平成21年4月分からの保険料の全額が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(平成21年3月分までは3分の1)が支給される。 |
4分の3 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること ・78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 平成21年4月分からの保険料の4分の3が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の5/8(平成21年3月分までは1/2)が支給される。 |
半額 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること ・118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 平成21年4月分からの保険料の2分の1が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の6/8(平成21年3月分までは2/3)が支給される。 |
4分の1 | 前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること ・158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 平成21年4月分からの保険料の4分の1が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の7/8(平成21年3月分までは5/6)が支給される。 |
上記の表を見て、「よくわからない…。」となる方もいるでしょう。
そんな方はぜひ年金事務所へ問い合わせしてみてください。そのときに収入を伝えることで、およその免除額を知ることができますよ。
国民年金の猶予制度の利用
20歳から50歳未満の方で、本人や配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合には、申請書を提出し、承認されると保険料の納付が猶予されます。
こちらの猶予制度は、平成28年6月までは30歳未満の方が対象でしたが、平成28年7月以降については、50歳未満の方が納付猶予制度を利用できるようになりました。
なお、承認基準および受給できる年金額については、免除する場合と同様です。
国民年金の免除や猶予の申請方法
「早く申請したい!」
と目を輝かせている方もいるのではないでしょうか。
免除や猶予制度の申請方法としては、以下の2通りがあります。
- 住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ申請書を提出する
- 住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ申請書を郵送する
申請書は現地で取得することもできますし、『日本年金機構の公式ホームページ』からPDFでダウンロードすることも可能です。
また、申請書を提出する際には、以下の添付書類が必要となることもおさえておきましょう。
- 年金手帳または基礎年金番号通知書(必須)
- 所得の申立書(所得についての税の申告を行っていない場合)
- 雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写し(雇用保険の被保険者であった方が失業等による申請を行う場合)
国民年金を滞納したら差し押さえられる対象になるもの

「仮に国民年金を滞納し続けたらどうなるんですか?」
と気になっている方もいるかもしれませんが、差し押さえという結末が待っています。
ここでは、国民年金を滞納したら差し押さえられる対象になるものについて解説を進めていきたいと思います。
もちろん、差し押さえになるまで滞納を続けるのは避けるべきなのは言うまでもありませんが、国民年金関連の基礎知識として知っておきましょう。
差し押さえには大きく4種類がある
一般的に、差し押さえ(強制執行)の対象になるものには、以下の4種類があります。
種類 | 主な内容 |
---|---|
不動産執行 | ・自宅などの不動産 |
準不動産執行 | ・売却時の査定額が20万円を超える滞納者の自動車 |
動産執行 | ・自宅内にある滞納者の財産 |
債権執行 | ・滞納者の銀行口座に入っている預金や有価証券などの金融財産 ・給与所得 |
給与所得や預貯金などはもちろんですが、自宅などの不動産や自動車、自宅内にある財産についても差し押さえの対象となります。
この段階まできてしまうと、待ったなしのレベルで強制執行されてしまうことは肝に命じておきましょう。
差し押さえの対象外となるもの
仮に差し押さえの段階まできてしまったとしても、差し押さえの対象外となるものもあります。
こちらについても確認しておきましょう。
種類 | 差し押さえの対象外となる項目 |
---|---|
不動産執行 | ・土地の定着物(地面に植わっている木や地盤に据え付けられた工業用の機械など) |
準不動産執行 | ・売却時の査定額が20万円未満の自動車 ・仕事で車を使用しなければならない場合 ・公共交通機関が充実しておらず、車がないと生活が困難であると認められた場合 |
動産執行 | 以下のような生活必需品と見なされるもの ・66万円以内の現金 ・テレビ ・冷蔵庫 ・洗濯機 ・電子レンジなど |
債権執行 | ・滞納者の銀行口座に入っている預金や有価証券などの金融財産のうち、児童手当は対象外 ・会社から滞納者へ支払われている給与のうち、以下の必要最低限の生活保障分は対象外。 基本額10万円+配偶者などの生計を共にする親族1名あたり4万5000円を加算した額(家族4名の場合は23万5,000円までの給与は差し押さえの対象外) |
ご覧の通り、最低限の生活をしていく上で必要なものに関しては、差し押さえの対象外となります。
もちろん、だからといって差し押さえられても問題ないというわけではなく、差し押さえにならないように年金の支払いを励行するか、免除や猶予制度などの対策を事前に取っておきましょう。
差し押さえされるまでの流れ|最終は差押え予告

「具体的にどれくらい滞納が続いたら差し押さえになるんですか?」
と気になっている方もいることでしょう。
ここでは、最終的に差し押さえられるまでの流れについて見ていきたいと思います。
「きちんと年金の支払いができていない!」
「正直、催告状がすでにきている!」
このような方はぜひ、こちらの内容にしっかりと把握し、すぐに然るべき行動に移しましょう。
催告書から全ては始まる
国民年金の未納が続いていると、ある日催告書が届きます。
これが最終的には差し押さえに続く全ての始まりであり、できればこの段階で対処しておきたいもの。
ところがこれを無視していると、以下の流れでどんどん事は大きくなってしまいます。
- 催告書や電話で支払いの催促がある
- 最終催告状(法的手段を取るという予告)が送られてくる
- 督促状が届く(これ以降は延滞金が発生し、差し押さえが実施される可能性が出てくる)
例えるなら、①は黄色信号、②は赤信号といったところでしょうか。
つまり、どれだけ遅くとも、②の段階までで何らかの対応をしなければ、最悪の事態に発展してしまうというわけです。
最終催告状が届いても、すぐに行動すれば最悪の事態は避けられる
仮に法的手段を取るという記載のある最終催告状が届いても、この段階であればまだ、以下のような手続きを申請することができます。
- 未納になっていた保険料の分割納付
- 保険料の免除や猶予制度
大切なのは、最終催告状を無視して逃げ続けることではなく、正直に状況を説明し、どのようにすれば良いかについて窓口で相談する事です。
窓口で受付してくれる相手も人間ですから、正直に相談してくる方に対しては、何とか打開策を講じようと親身になってくれるはず。
向き合うべき事から目を背け続けても、状況はどんどん悪化するばかりだという事は言うまでもありませんよね。
年金滞納で差し押さえられる前に行動しよう!
もしあなたが今、年金を滞納してしまっているという状況なのであれば、できる限り早く、以下のような行動を起こしましょう。
- お金の管理を見直し、年金をきちんと支払う
- 年金の免除申請をする
- 年金の猶予制度を活用する
改めての確認にはなりますが、国民年金の納付は20歳〜60歳までの全ての国民が果たすべき義務です。
ぜひ、本記事の内容を振り返っていただき、差し押さえという最悪の事態が現実に起こり得る事を理解した上で、然るべき行動を取ってくださいね。